シャモジの収納場所を、夫はまた間違えました。
それだけのことで、わたしは信じられないぐらいイラついていました。移動すればいいだけなのに、怒りが止まらない。しまいには自分でも不安になり、こう思いました。——これは、もしや噂に聞く更年期?
認めたくない気持ちと、ホルモンのせいにして楽になりたい気持ち。40代の乙女心は、なかなか複雑です。
イライラの正体を、「自律神経」で片付けられなくなった日
原因は仕事、家事、育児のストレスだと。肩こりも冷えも寝不足も、全部「自律神経が乱れていること」にしてやり過ごしてきました。少なくとも、1年ぐらい前までは。
タブレットや読書に夢中の子どもに何度声をかけても返事がない。以前なら「集中してるから仕方ないか」と華麗にスルーできていたはずの些末な日常が、今のわたしには全て許し難い事件に「いちいち」なってしまうのです。この沸点の低さは、一体どうしたことでしょう。
ホットフラッシュのような典型的な症状はないし、月経周期も平均的。だからこそ「更年期」という言葉が自分ごとになりませんでした。でも、感情がコントロールできない、この異常事態に診断が欲しい。わたしは重い腰を上げて、婦人科の門を叩くことにしました。
「生理、もう止まってるでしょ?」
受診の目的は、血液検査で女性ホルモンの数値を確認すること。本来は月経開始3〜5日目が理想とされていますが、スケジュールの都合で月経15日目に採血しました。念のため、女性医師に照準を合わせて来院。彼女からは「時期によって数値に差は出るが、傾向はわかる」との説明を受け、結果を待ちました。
結果を聞く日、担当が男性医師に変わりました。検査結果を聞くだけだし、と気にしなかったのが大間違いでした。彼は開口一番、こう言い放ちました。
「あ〜、生理もう止まってるでしょ?」
前回のカルテには「平均28日周期で順調」と記載されているはずです。それすら見ていないことは明白でした。「いえ、ありますけど」と即座に反論すると、彼は「いつ止まってもおかしくない数値だね」と言い訳のように続けました。
その瞬間、わたしの脳内では「貴様のデリカシーのない発言のショックで、逆に生理が止まりそうだわ!」という叫びとともに、シルヴェスター・スタローン扮する「ランボー怒りの脱出」が上映。わたしがランボーでアメリカ人だったら、医師か病院を訴訟するレベルです。
あの医者の呪いか?本当に3週間止まった生理
驚いたことに、その診察のあと、本当に3週間も生理が来なかったのです。
実は最終月経の前後、海外に暮らすわたしのもとへ、義両親が遊びに来ていました。しかも3度目の渡来。観光名所はすでに行き尽くしています。
リニューアルした等の目新しい観光地、清潔で服を着たままOKなマッサージ店の下見、味だけでなく雰囲気も良いレストランのリストアップ、外食ばかりで胃を疲れさせないように時々の手料理——夫は「もっと長くいたら?」と提案するだけして、段取りはすべてわたし一人でした。
義両親は「また来年も来たい」と大変満足して喜んでくれました。そして、わたしは燃え尽きていました。
あの過酷なストレスが排卵を数週間遅らせたか、次の周期の排卵自体を止めてしまったのでしょう。つまり、月経15日目だと思って採血したデータそのものが、すでに異常値だった可能性が高いのです。そのタイミングで「止まってるでしょ」と断言するなんて、と男性医師に対する怒りが再燃しました。
けれども、自分なりに数値を調べてみると、更年期あるいは閉経移行期に足を踏み入れていることは否定できない事実のようです。だとしたら、なおさら情緒不安定になりやすい時期の女性に対して、あの無神経な一言は医療従事者として、いや一人の大人として、令和的にも「ナシ」でしょう。
今回の教訓はひとつ。これからはどんなに忙しくてもスケジュールを調整して、女性の気持ちに寄り添える同性の医師の日に予約を入れること。わたしの繊細な「アラフィフ乙女心」を守れるのは、結局のところ、わたし自身しかいないのですから。
